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【事例インタビュー】 コクヨ株式会社 代表取締役社長・黒田英邦様 (聞き手:弊社代表取締役・竹川)

9月8日(火)8:00〜12:30、コクヨ株式会社の黒田社長含めた約40名の役員・社員の方々向けに、zero to oneより「AI実践ワークショップ」を開催させていただきました。「AI実践ワークショップ」は、数学とPythonの事前学習ののち、実際にPythonでのプログラミングで実装を行いつつ、人工知能の本質を「体感」していただくプログラムです。4時間半に及ぶ本ワークショップの翌日9日(水)、十分なコロナ対策のもと、黒田社長にインタビューを行わせていただきました。

 


(写真①:コクヨ社内でのインタビュー風景)

 

竹川:今回は貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
まずはこの度、リアル、かつ文系の方でも実際にプログラミングを体感していただきながらのプログラム、御社では「トライAI」と呼ばれていらっしゃいましたが、プログラムそのものを企画された背景や問題意識について、教えてください。

 

黒田社長:今会社として、2030年の大きな方針、目標に向けて様々な取り組みを進める中で、何より社会の中の「ビッグイシュー」を把握しないといけないと考えています。中でも、AI・機械学習については、その「ビッグイシュー」の大きなものの一つです。特に、事業に近いところで考えるためにも、手触り感を掴みたく、今回のような形式でのプログラムを企画し、ご相談しました。

 


(写真②:コクヨ黒田社長)

 

竹川:今回、社長ご自身もご参加いただきましたが、率直なご感想をお聞かせいただけますか?

 

黒田社長:私自身もAI・機械学習については個人的にも関心がありましたし、オフラインで開催いただけるとのことで、良い機会だなと思い参加させていただきました。結果、ワクワクしながら参加できたと思っています。

 

竹川:4時間半という短い時間でかなり凝縮してやらせていただきましたが、その「ワクワク」の部分をもう少しお聞かせいただけますか?

 


(写真③:弊社竹川)

 

黒田社長:結論、すごく楽しかったです。
もともと文系出身で、プログラミングとは縁遠いキャリアを歩んできたこともあり、またどちらかというと右脳派だと思っていますのでどうなるかなと思ったのですが、講師の瀬谷さんの「数学は美しい」というお話をきき、すごくクリエイティブで面白いなと。

正直、その数学的な要素は、おそらく今回の短時間の中で理解も充分ではないかと思いますし、すぐ使えるかと言われるとそうではないかと思いますが、機械学習・AIの構造的なものが何なのかという、キーとなるところは理解できました。どうしてAIが世の中で、未来や可能性をひらくための手段として注目されているのか、漠然と感じていたところが、理屈でしっかり理解することができたのではないかと思っています。

 

竹川:次に、御社内での活用についておうかがいしたいと思います。
2017年頃、カウネットでチャットボット導入事例などあったようですが、それ以外で何か事例などあれば教えてください。

 

黒田社長:弊社について言うと、これまではほとんどビッグデータを使ってこられていないのではないかと思います。基本的に文具やオフィス家具のメーカー事業が中心にありますが、メーカーの事業の場合は、商品1つをつくって、多くの人に使って頂くという工業製品の世界ですので、多くのデータや情報をどう扱おうということがすぐにはありません。一方で、物理空間でソリューションとして提供しているところにデジタルを組み合わせてどう提案してくかという可能性はあるのだろうなと思っており、その時に、人工知能というアプローチがあるともっと発想が広がるのだと思っています。

弊社の新しいIoTのサービスで「しゅくだいやる気ペン」というものがあるのですが、毎日子どもたちがどれくらいペンを動かしているのかがデータでわかる。3ヶ月位で使わなくなってくるとか、それを超えると結構長く使ってくれるとか、その中でもヘビーユーザートップ5がいることなど、いろいろなデータが溜まってきました。

もともとは子供たちの学習の習慣化を助けて、親の「勉強しなさい」という、ストレスフルなコミュニケーションを減らす目的で設計されているのですが、結果として学習の習慣化につながっているようです。習慣化している子どもというのは、朝の決まった時間に毎日ずっと続けられている。これだけだと2次元のデータですが、そこからもっと学びの質を見に行くとか、その習慣化のコツを探しに行くというふうに、新しい気付きを生んで行きたいと思っています。今回の講座で学んだように、色々なデータを集めて、仮説を持って調べていくと、また新しい気付きが出てくるのではないか、そんな風に思うのです。

商品自体はハードプロダクトですが、デジタル空間とつなぐことで、もっと色々なデータが取れたりすれば、物理空間ではできないことを見出していけるのではないかと期待しています。

 


(写真④:コクヨ社の十分なコロナ対策のもと、インタビューを実施)

 

竹川:物理空間からデジタル空間へ、と言う流れは、今回の講座でも大きなポイントの一つでした。

 

黒田社長:弊社のヒット商品に「東大合格生のノートはかならず美しい」というベストセラー本の作者の方と一緒に開発したノートがあります。基本的には罫線に等間隔にドットが入っているだけなのですが、そのドットが目印となり、方眼としても使え、図面を描くときに綺麗に書けますし、整理して書けます。このノートが羅線に機能を持たせて「整理術」をウリにしているのと同じように、私たちの原点である文具で、デジタル空間も交えて付加価値を上げていくためのチャレンジをして行きたいなと思います。

よく先人が言った言葉に、「機械に使われるな」と言う言葉があります。機械に使われる、つまりボタンを押してモノを入れて流しておいたら良い、となってしまったら、もうその工場はダメで、機械を使いこなすのが人間だと。使いこなし方に、人間の創造性の余地があるのです。だから、高い機械、性能が良い機械があれば利益が出る、と言う訳ではないのです。

同じように、今回の講座でAIの話を聞いても、どう活用するの?という話となったときに、結局は人間の使いようだなと感じました。私たちが扱っている文具とか、オフィス空間といった非常にアナログな事業も、デジタルに取って代わられるのではないか、どんどん縮小するのではないかと言われるのですが、物理空間でやっていることを拡張していくのがデジタル空間であるとするのならば、別に取って代わられることはないのだと思います。結局はアナログとデジタルの掛け算の組み合わせが重要で、私たちは、文具、家具、オフィス空間というのを、デジタルと掛け合わせることで、もっと面白い価値に入れ替えて行くことが大切だなと、今回そんな確信を持ちました。

 

竹川:ありがとうございます。弊社顧問の松尾先生からは「オフィス空間最適化カンパニーになれるのでは」というお話もいただいていますので、今後のアナログとデジタルの掛け合わせに期待しています。

最後に、人の話を伺わせてください。
今お話いただいたような御社の未来を目指して、どういう人材が今後必要なのかという部分と、その育成に関して、お考えがあればお聞かせいただければと思います。

 

黒田社長:弊社は文具やオフィス家具、それにまつわる流通事業で115年間続いてきており、その本業について、世の中の変化が起きても形を変えながら成長させて行く、という「改善型」の能力については、非常に長けているのではと感じています。例えば、現在のコロナ禍で事業環境が変わっても、それに対応しながら、改善して行くことはできそうだなと思っています。

一方で、自分たちで商品やサービスを新たに作って行く必要もあります。その商品やサービスを「事業」まで広げて生み出していけるような、いわゆる「イントレプレナー」みたいなレベルまで、人材の能力を上げていきたいなと思っています。

そうなると、やはり単にある商品の販売だとか、収益というだけではなくて、事業全体のコストであるとか、資産であるとか、キャッシュであるとか、意識しながら運営することはもちろん、新しい事業を生み出すという時点で、デジタル化というのは前提条件になっていると思うのです。事業運営を推進していく上でのデジタル化もそうですし、価値を提供していく上でのデジタル化も考えていきたいです。「デジタル化☓新しいニーズ」を切り口に、新しい事業を捉えられるような、そういう人材育成や、外部からの人材獲得もしていきたいと思っています。

 

竹川:本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

 


(写真⑤:コクヨ社内にて)