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 ここ10年でAI技術は驚くべき進化を遂げ、今なお急速に進化し続けています。現在ではその汎用性が広がり、さまざまな産業分野で活用されています。むしろ、AIが使われていない分野を探すほうが難しいほどです。さらに、ChatGPTのようなAIを活用したサービスが次々と登場し、私たちの生活の一部として身近に存在しています。

 同じく急成長している分野として注目されているのが宇宙産業です。たとえば、SpaceXのファルコン9が第1段目のロケットを地上に着陸させる、まるでSFのような技術が現実のものとなりました。また、人工衛星の打ち上げ数は過去5年間で10倍以上に増加し、大学や民間企業が開発する小型衛星も急増しています。これまで国家主導だった宇宙開発が、今では民間にも広がり、ビジネスとしての応用も始まっているのです。

 本記事では、このように急成長を遂げているAI技術と宇宙産業の交差点で、どのような技術的発展が期待されているのか、直面している課題は何か、そして既に始まっているビジネス利用の実例を紹介していきます。

1. 宇宙産業に利用できるAI技術

 宇宙技術にAIを活用することでどんなメリットがあるのかを考えると、必ずしも両者が完璧に親和性が高いとは言い切れません。実際、大きな課題も存在しています。まずはAIと宇宙技術の特徴をおさらいし、現状を見ていきましょう。

 宇宙開発では、信頼性の高い技術しか使用できません。精度の高さや安全性が何よりも求められ、そのシステムが透明であることが前提です。信頼性に欠ける技術やシステムは排除されるのです。一方で、AI技術の特徴は、大量のデータを使って高精度な予測を行うこと。しかし、宇宙開発に使えるデータは他の分野に比べて圧倒的に少ないのが現状です。異常検知を行う際も、宇宙では膨大な数の異常データを収集するのは難しく、精度が向上したとしても、宇宙で使えるレベルの高精度にするのは簡単ではありません。また、AIの予測過程は「ブラックボックス」として扱われがちで、透明性が必要な宇宙開発には不向きです。これらの理由から、宇宙開発におけるAIの導入にはいくつかのハードルがあります。

 一方で、宇宙産業から得られたデータを地上で活用する動きはすでに盛んです。たとえば、人工衛星から取得された画像データを使い、地上の問題解決に役立てる技術です。これらのデータはこれまでも天気予報や軍事活動に利用されてきましたが、現在は、地球の軌道には数多くの人工衛星が飛び、地球の画像やセンサーデータを以前よりも大量に取得できるようになりました。これにより、宇宙データの活用はさらに活発化しています。例えば、宇宙から撮影された畑の画像データを使い、AIが農作物の成長状況を分析します。このデータを株価情報などと組み合わせることで、AIが将来的な投資方針を予測することが可能です。また、人工衛星から取得した巨大プラントの画像データを使い、AIで異常を検知する技術も実際に運用されています。

このように、宇宙で得られたデータを地上で活用し、AIを駆使して新たな価値を創出する取り組みは、今後ますます広がっていくでしょう。

2. 現在成長している技術

AIと宇宙を掛け合わせた技術として、すでに成熟しつつある衛星画像を地上の問題解決に生かすというものを紹介しました。ここでは、現在まさに成長しつつある技術についていくつか紹介したいと思います。

まず一つは、衛星で取得したデータのうち重要な情報だけをAIで判定して地上におろしてくる技術です。すでに、このような技術を用いるといったことは行われていますが、より大量のデータの取得を衛星で行えるようになり通信トラックが増えている中、欲しいデータだけ抽出する技術は高速な通信に欠かせません。今後さらにその重要性が高まっていくでしょう。

2つ目として、衛星コンステレーションの自立制御にAIを用いることがあります。スターリンクのような小型衛星を用いたコンステレーション技術は今後ロケットの更なる打ち上げ数増加により、インフラ的な重要な技術となるでしょう。1つのコンステレーションに使われる衛星数は数千機もの衛星が使われるでしょう。その際、衛星の制御を人間が行うことは非常に難しく、全ての衛星を管理することができません。そこで、AI技術を用いた自動制御システムで運用されます。すでに、スターリンクではこのような技術で運用されていますが、技術の進歩により、効率的な配置で省エネルギーな制御を行うことや、衛星数を減らし打ち上げコストを削減することにもつながるかと思います。

3つ目は、宇宙ロボットにAIを搭載するというものです。従来の技術と自動運転のような現在地上で開発が勧められている技術をもとに高度な宇宙探査ロボットが作られるでしょう。現在も技術開発が活発に行われています。アルテミス計画で有人月面探査が行われる過程でこのようなAIを搭載したロボットは人ができない危険な作業や力が必要な作業の大きな手助けになるでしょう。今後の技術発展に期待したいです。

最後に、AIと3Dプリンタを用いたロケットエンジン開発について紹介します。AIと3Dプリンタの組み合わせによる設計は現在応用が活発に行われており、生成AIを用いて新しいデザイン、設計を行い3Dプリンタで実物を作り出します。特に自動車産業で取り入られており、Volkswagenやその他多くのスタートアップ企業が取り組んでいます。この技術を応用してロケットエンジンを作っている企業があります。LEAP71はCADを含めた人の使わず、設計を行い3Dプリンタでエンジンを作成し燃焼実験に成功しました。人の手で設計を行うと数ヶ月以上かかるようなものを2週間程度で完成させました。より短期間での開発製造が実現し、ロケットの低コスト化が進み、一層できることが増えていくでしょう。

3. AI×宇宙産業のビジネス

宇宙開発は今後さらに加速し、得られるデータも爆発的に増加するでしょう。これにAI技術を組み合わせることで、これまでにない新たな価値が生まれます。また、AIが宇宙開発に活用されることで、その技術の進化もますます加速していくはずです。この進展に伴い、宇宙の利用は従来の学術的なミッションを超え、ビジネスとしての可能性が広がりつつあります。

ここでは、宇宙データとAIを組み合わせて価値を創出している企業や、AI技術を宇宙で活用している企業の事例を取り上げ、そのビジネス内容を詳しく見ていきます。

3.1 Ubotica Technologies

アイルランドのUbotica Technologiesは、衛星データサービスを提供する企業で、AIを活用した「Cognisat」プラットフォームを展開しています。このプラットフォームは、コンピュータビジョンや機械学習を利用して、衛星データの高性能な処理を低消費電力で行い、地球観測や宇宙ゴミ追跡といった分野で利用されています。飛行中のデータを使用してモデルの精度を高めるといった自立的な学習ができるという特徴があります。
企業サイト: https://ubotica.com/

3.2 Sidus Space(Exo-Space)

アメリカのExo-Spaceは、衛星上でAIを用いたエッジコンピューティング技術を提供している企業で現在はSidus Spaceに買収されました。Exo-Spaceが開発した「FeatherEdge」は、衛星画像の分類や物体検出をリアルタイムで行い、関連データのみを送信するため、低遅延でデータを処理することができます。これにより、衛星データの即時解析が可能となり、従来の地上ベースの処理を大幅に効率化しています。Sidus SpaceはLizzieSatと呼ばれる商業小型衛星を概念設計製造を行う企業で現在3機の衛星を打ち上げ、運用を行っています。
企業サイト : https://sidusspace.com/

3.3 HawkEye 360

HawkEye 360は2015年に設立されたアメリカのベンチャー企業で、AIを活用した無線周波数信号の解析を行う企業です。地理空間データを解析し、特定の発信源を特定することが可能です。データを大量のRFデータから有用なインサイトを抽出するために、AIを活用し、パターン認識や異常検知を用いています。これにより、より詳細な電波信号の分析が行われ、軍事や通信などの分野で活用されています​。また、これらのデータは複数の人工衛星を用いたコンステレーション技術によって行われています。
企業サイト : https://www.he360.com/

3.4 Cognitive Space

Cognitive Spaceは、AIを利用した衛星の運用管理を専門とする企業で、AIによる自然言語処理を用いて衛星タスクの最適化を行っています。この企業が提供するサービスは主に「CNTIENT.Earth」「CNTIENT.Optimize」の2つがあります。「CNTIENT.Earth」はAIを用いて商業衛星データの注文と管理を行うサービスであり衛星データプロバイダーと利用者のやり取りを手助けします。一方、「CNTIENT.Optimize」は衛星ミッションの管理をAIに任せるサービスでデータ収集とミッションスケジューリングの効率化などを行います。
企業サイト : https://www.cognitivespace.com/

3.5 Craft Prospect

イギリスのCraft Prospectは、AIを活用した低遅延の宇宙作業を専門とするスタートアップであり、欧州宇宙機関(ESA)のミッションを手動している企業の一つです。オンボードAIを用いて地上での衛星の制御をできるだけ行わず自立制御を行うことで効率化を行います。また、量子技術をもちいた通信技術(量子鍵配送)を搭載しセキュリティの高い通信を行います。
企業サイト : https://www.craftprospect.com/

3.6 Ridge-i

Ridge-iは日本の企業で、宇宙データとAI技術を組み合わせたソリューションを提供しています。主にAIを活用したコンサルティングを行っており、その分析に衛星データを活用しています。「GRASP EARTH」では撮影地点の時間変化を調査することができます。4月に上場を果たし、より注目度が上がっている企業の一つです。
企業サイト : https://ridge-i.com/

3.7 LocationMind

LocationMindは東京大学発のベンチャー企業で位置情報データを解析したサービスを行っています。その解析データに人工衛星からの得られる位置情報を用いています。位置情報は悪意によって書き換えられたり不正に利用されることがあり(Spoofing, Meaconing)、これらをAIを用いた技術により検知しセキュリティを確保するといったことなどを行っています。
企業サイト : https://locationmind.com/

3.8 Trust Smith

Trust Smithは東京大学発のベンチャー企業でAIとロボティクスを駆使して、製造業や物流業に向けた革新的なソリューションを提供している東京大学発のベンチャー企業です。主な事業は物流用無人ロボットの開発であり、AIを用いた画像認識や物体検知の技術をもとに宇宙空間で必要となる無人ロボットの開発を行っています。
企業サイト : https://www.trustsmith.net/

3.9 Fleet Space

Fleet Spaceはオーストラリアの企業で衛星技術を活用して鉱物探査、宇宙探査、防衛を扱っています。「ExoSphere」は特に衛星画像とAIを掛け合わせた探査技術であり、鉱物システムをリアルタイムで3Dマッピングし、地下資源の探査を支援します。この技術は将来の月面探査や他の惑星の探査絵の応用もできるのではないでしょうか。
企業サイト : https://www.fleetspace.com/

3.10 Synspective

Synspectiveは、宇宙とAI技術を活用して、地球観測とデータ解析の分野で革新的なソリューションを提供しています。同社の衛星コンステレーションとAI技術を組み合わせたプラットフォームは、都市インフラのモニタリングや災害対策のための精密なデータ解析を行います。この技術は、リアルタイムで都市の変化やリスクを把握できるため、効率的な意思決定や防災対策に役立っています。
企業サイト : https://synspective.com/

4. まとめ

これまで、近年成長が目覚ましい宇宙産業とAIを掛け合わせた技術や相乗性について見てきました。課題はありますが、実用化に近づいており今後さらにAI技術の宇宙開発利用は進んでいくでしょう。最後に、これらの技術の利用や開発を行っている民間の企業について紹介しました。新技術がビジネスとなることで宇宙市場の規模が拡大し、さらなる技術発展をもたらすでしょう。今後の成長に注目したいです。

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